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別れさせ屋コラム 慰謝料をもらって離婚すれば、本当に私は「得をする」のだろうか
慰謝料をもらって離婚すれば、本当に私は「得をする」のだろうか
慰謝料をもらって離婚すれば、本当に私は「得をする」のだろうか
夫やパートナーの不倫を知ったとき、「慰謝料を取って離婚してやりたい」と思うことはあると思います。
私が30代の女性という立場で考えたときも、その感情自体は不思議ではありません。
裏切られた。
嘘をつかれた。
自分だけが傷ついた。
それなのに相手だけが何事もなかったように生活していくなんて納得できない。
だから、せめて慰謝料くらい払ってほしい。
そう考えるのは自然なことだと思います。
でも、30代で結婚していて、仕事があり、住まいがあり、場合によっては子どももいる立場になると、もう一つ考えなければならない現実があります。
「慰謝料はいくら取れるのか」と、「離婚したあと私は経済的にどうなるのか」は、まったく別の問題です。
むしろ数字だけで考えれば、慰謝料を受け取って離婚するより、婚姻関係を維持したことで得られる経済的利益の総額のほうが、はるかに大きくなる家庭も珍しくありません。
これは「だから離婚しないほうがいい」という話ではありません。
離婚したほうが幸せになれる人も当然います。
ただ、怒っているときほど、慰謝料という一度に見える大きな金額だけを見て、その後10年、20年と続く生活のお金を見落とさないことが大切だと思うのです。
不倫慰謝料は何千万円も受け取れるものではない
不倫の慰謝料には、「不倫をされたら一律○○万円」という決まりはありません。
婚姻期間、不貞行為の期間や回数、それまでの夫婦関係、不貞によって別居や離婚に至ったのか、子どもがいるのかなど、さまざまな事情によって変わります。
弁護士による実務上の解説では、不貞慰謝料についておおむね50万円から300万円程度が一つの目安として示されることがあります。
一般には、婚姻関係を継続する場合より、不貞が原因となって離婚に至った場合のほうが精神的損害が大きいと評価され、慰謝料が高くなる傾向があります。
ただし、これはあくまで目安です。
300万円が必ず認められるわけでもなければ、事情によってはそれより低くなることも、高くなることもあります。
そして、ここで一度考えてみたいことがあります。
仮に200万円の慰謝料を受け取ったとして、その200万円は、この先の生活を何年間支えてくれるでしょうか。
200万円は大金。でも「毎月の生活」に直すと見え方が変わる
200万円と聞けば、大きなお金です。
でも、毎月の生活費として考えると印象が変わります。
例えば離婚後、家賃、光熱費、食費、通信費、保険、車、子どもの教育費などを含め、離婚前より自分の負担が毎月10万円増えたとします。
月10万円 × 20か月 = 200万円。
つまり、200万円の慰謝料でも、生活費の負担が月10万円増えれば約1年8か月分です。
毎月15万円の差なら、
200万円 ÷ 15万円 = 約13か月。
「慰謝料200万円」は大金ですが、一生の生活保障ではありません。
30代なら、これから40代、50代、60代と何十年もの生活があります。
だから私は、慰謝料を見るときに「何百万円もらえるか」ではなく、「この金額は、私の生活の何か月分なのか」と考えたほうが現実に近いと思います。
離婚しなければ、慰謝料以外の経済関係はそのまま続く
ここが、慰謝料だけを見ていると見落としやすい部分です。
婚姻している夫婦には、婚姻生活に必要な費用を分担する関係があります。
婚姻費用には、衣食住だけでなく、医療費、未成熟の子どもの養育費や教育費など、夫婦や子どもが生活していくために必要な費用が含まれます。
たとえ別居していても、離婚が成立していなければ、一定の場合には婚姻費用の分担を求めることができます。
婚姻関係を続けることによる経済的な価値は、「慰謝料を取らない代わりに0円」ということではありません。
現在の住宅に住み続けられること。
住宅ローンや家賃を相手が負担していること。
生活費を相手の収入から負担していること。
子どもの教育費を夫婦で負担すること。
家庭によっては社会保険上の扶養関係があること。
将来的に夫婦として形成していく財産。
配偶者としての相続上の地位。
家庭によって内容は異なりますが、婚姻関係にはさまざまな経済的要素があります。
10年単位で計算すると、慰謝料との差はさらに大きくなる
例えば、自分や子どもの生活について、配偶者側から月15万円相当の経済的負担が継続している家庭を仮定します。
15万円 × 12か月なら年間180万円。
10年間なら、
1,800万円。
月20万円相当なら、
10年間で2,400万円です。
もちろん、この全額を妻が自由に受け取っているわけではありません。
夫自身の生活費もありますし、夫婦の収入、住宅、子どもの人数、共働きかどうかによって実際の経済効果は異なります。
ですから、単純に「結婚していれば2,400万円得をする」という計算ではありません。
しかし、比較する金額の単位そのものが違うことは分かります。
慰謝料は数十万円から数百万円という一時的な金額。
婚姻生活は毎月発生する生活経済を何年、何十年と積み上げるもの。
家計を配偶者の収入が大きく支えている家庭では、婚姻を続けた場合の経済的価値の総額が、離婚時の慰謝料を大幅に上回る可能性があります。
だから、「慰謝料を多く取って離婚できれば経済的にも勝ち」というほど現実は単純ではありません。
もちろん、離婚すると慰謝料以外のお金もある
離婚するときに問題になるお金は慰謝料だけではありません。
財産分与。
子どもがいる場合の養育費。
年金分割。
その他、個別に取り決める金銭。
こうしたものがあります。
特に財産分与と慰謝料は別のものです。
夫婦で婚姻期間中に形成してきた財産について清算するのが財産分与であり、不貞などによって受けた精神的苦痛について問題になる慰謝料とは性質が異なります。
そして子どもがいる場合には養育費があります。
ただし、ここで非常に重要なのが、
「養育費を毎月○万円支払うと約束した」ことと、「そのお金が10年、15年と本当に毎月振り込まれる」ことは同じではありません。
養育費を取り決めても、約4割が現在は受け取れていないという現実
これは離婚を考える女性には、知っておいてほしい数字です。
こども家庭庁が公表している「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」では、母子世帯のうち、
養育費の取り決めをしている世帯は46.7%
でした。
そして、
現在も養育費を受給している母子世帯は全体の28.1%
です。
さらに重要なのは、「取り決めをした世帯だけ」で見た数字です。
養育費について取り決めをしている母子世帯のうち、現在も受給している割合は57.7%。
逆に考えると、
約42.3%は、養育費の取り決めをしたにもかかわらず、調査時点では現在受給していません。
約4割です。
私は、この数字はかなり重いと思います。
離婚するとき、
「毎月5万円もらえる」
「20歳まで払うと言っている」
「ちゃんと書面にもした」
と言われれば、その金額を将来の収入として家計表に入れたくなります。
でも、現実には途中で支払いが止まる可能性があります。
転職する。
収入が減る。
再婚する。
連絡が取れなくなる。
約束を守らなくなる。
事情変更によって養育費の増減が問題になることもあります。
養育費は子どものための大切なお金ですが、「将来必ず入金される給与」と同じ前提で生活設計をすることはできません。
2026年から養育費の回収制度は強化された。それでも「必ず払われる」わけではない
2026年4月1日から、養育費に関する制度は変わっています。
現在は、父母が養育費について書面で取り決めた場合、一定の範囲について先取特権が認められ、従来より差押えを利用しやすい制度になっています。
先取特権が認められる範囲は、子ども1人につき月額8万円を上限として設定されています。
これは「養育費は8万円までしか決められない」という意味ではありません。
養育費そのものは父母の収入などを考慮して決めます。そのうち、先取特権によって回収しやすくする範囲について月8万円という上限が設けられています。
さらに、2026年4月1日以降に養育費を取り決めないまま離婚した場合には、正式な養育費を決めるまでの暫定的な制度として、子ども1人につき月額2万円の「法定養育費」も新設されています。
ただし、この2万円は養育費の標準額ではありません。
あくまで正式な養育費を決めるまでの暫定的・補充的な制度です。
制度は以前より強化されています。
それでも、
法律上「請求できる」ことと、毎月何もしなくても「確実に入金され続ける」ことは別です。
支払いが止まれば、場合によっては差押えなど、回収のための手続きを行わなければならないことがあります。
養育費は「民事契約なの?」――正確には父母間の取り決め
離婚時に、
「毎月5万円を20歳まで払う」
などと約束することがあります。
一般的には「養育費の取り決め」「父母間の合意」と考えると分かりやすいでしょう。
口約束だけではなく、金額、支払日、支払期間、振込先などを具体的に書面へ残すことが重要です。
公正証書にする方法や、家庭裁判所の調停・審判によって定める方法もあります。
特に公正証書の場合、必要な強制執行認諾文言を入れることで、支払いが滞った際に強制執行を利用しやすくできます。
2026年4月以降は、養育費について父母間で作成した書面にも一定範囲で先取特権が認められるようになりました。
それでも、
「約束したから安心」ではなく、「もし払われなくなったら、どう回収するのか」まで考えて初めて生活設計になります。
慰謝料も分割払いなら「約束した総額」と「実際に受け取る総額」は違う可能性がある
慰謝料についても同じです。
例えば、
「慰謝料300万円。毎月5万円ずつ支払う」
と合意したとします。
契約書には300万円と書いてあります。
でも、本当に60回すべて支払われて、初めて300万円を受け取ったことになります。
途中で支払いが止まれば、「慰謝料300万円」という合意があっても、実際に手元へ入った金額は300万円ではありません。
慰謝料の分割払いについて、「何割が途中で不払いになる」という信頼できる全国統計を安易に示すことはできません。
しかし、分割払いに将来の不払いリスクがあること自体は考えておかなければなりません。
大きな金額を約束してもらうことだけでなく、
一括で受け取るのか。
分割ならどのような書面にするのか。
支払いが止まったときにどうするのか。
まで確認する必要があります。
子どもがいる30代女性なら、「慰謝料300万円」より先に10年後まで計算したい
例えば、子どもがまだ5歳だったとします。
これから小学校、中学校、高校があります。
15年間近く養育費が必要になる可能性があります。
仮に養育費が月5万円なら、
5万円 × 12か月 × 15年間で、
900万円。
月8万円なら、
1,440万円。
数字だけを見ると大きな金額です。
しかし、
これは「今日900万円、1,440万円を受け取れる」という意味ではありません。
15年間、毎月欠かさず支払われて初めて、その総額になります。
途中で支払いが止まれば実際の受領総額は変わります。
しかも養育費は、母親が離婚したことによる損失を補償するためのお金ではなく、基本的には子どもの生活や成長のためのお金です。
自分の老後資金や自分自身の生活保障として、すべて自由に使えるお金として計算するものでもありません。
「慰謝料+養育費の予定総額」を、そのまま離婚後に自分が手にする財産だと考えると、生活設計を大きく読み違える可能性があります。
「夫と一緒にいたくない」と「今すぐ離婚する」は同じではない
不倫された直後は、
顔も見たくない。
一緒の家にいたくない。
もう夫婦ではいられない。
そう思うことがあります。
でも、感情として「今は一緒にいたくない」ことと、法的に「今日婚姻関係を終了させる」ことは同じではありません。
別居という選択もあります。
別居しながら婚姻費用について整理し、証拠を確認し、財産を把握し、仕事を安定させてから今後を決めるという方法もあります。
「今は離婚しない」という判断は、「一生許す」という意味ではありません。
自分にとって最も不利なタイミングで、怒りだけを理由に人生で大きな決断をする必要はありません。
離婚回避は「我慢」ではなく、生活再建の戦略になる場合もある
離婚しないというと、
「不倫を許した」
「負けた」
「夫に依存している」
と思われることがあります。
でも、そうとは限りません。
子どもがいる。
現在の住居を維持したい。
仕事を増やすために時間が必要。
貯蓄を増やしたい。
資格を取りたい。
不倫相手との関係が本当に終わったのか確認したい。
夫婦関係を再構築できる可能性を見極めたい。
そうした理由で婚姻を維持することは、単なる我慢ではありません。
自分と子どもの生活を守るための現実的な判断になる場合があります。
そして準備が整った後で、それでも離婚したいと思えば、その時点で改めて選択することもできます。
逆に、お金のためだけに婚姻を続ければいいわけでもない
ここまで経済面を書きましたが、一番大切なのはこれです。
婚姻を継続したほうが経済的に有利だからといって、必ず婚姻を続けるべきだという意味ではありません。
暴力がある。
脅迫がある。
生活の安全が守れない。
精神的な負担が非常に大きい。
子どもの生活環境に重大な問題が生じている。
夫婦関係を続けること自体が、自分の人生を壊してしまう。
こうした状況なら、お金とは別に考えなければなりません。
人生は家計簿だけでは決まりません。
ただ、感情だけでも決めなくていい。
心とお金、その両方を数字と事実で確認して決めればいい。
私はそう思います。
不倫相手と別れさせた後のことまで考える
「離婚したくない。でも不倫相手とは別れてほしい」
という女性もいます。
これは矛盾した希望ではありません。
夫を愛しているから離婚したくない人もいるでしょう。
子どもの家庭を守りたい人もいます。
経済的な理由で婚姻を維持したい人もいます。
そして、「今すぐ離婚するほどの覚悟はないけれど、このまま不倫関係を続けられるのも耐えられない」という人もいます。
その場合、考えるべきゴールは単純な「別れさせること」ではありません。
不倫相手との関係が解消された後、
夫婦関係をどうするのか。
再び信頼関係を作れるのか。
生活費や家庭への責任をどうするのか。
同じことが繰り返されないために何が必要なのか。
そこまで考える必要があります。
別れさせ屋さんへ相談する場合にも、単に二人の関係を終わらせることだけではなく、現在の事実や関係性を整理し、その先でご相談者様がどの生活を望んでいるのかまで含めて考えることが重要です。
私なら「いくら慰謝料を取れるか」より、4つの数字を先に出す
もし私自身が不倫された立場なら、感情が少し落ち着いたところで、紙に4つの数字を書きます。
1.離婚した場合に、自分一人で必要になる毎月の生活費
家賃、食費、水道光熱費、通信費、保険、車、教育費などを実際に計算します。
2.自分だけの収入で毎月いくら不足するのか
「何となく生活できそう」ではなく、月額で出します。
3.慰謝料・財産分与として現実に確保できる金額
請求した金額ではなく、実際に受領できる可能性がある金額で考えます。
4.養育費が途中で止まっても生活できるか
養育費を最初から0円として考える必要はありません。
ただし、
「絶対に毎月入る」という前提だけで住宅費や教育費を設計しないことです。
この4つを計算して初めて、
「今離婚する」
「しばらく婚姻を維持する」
「別居して準備する」
「夫婦関係を再構築する」
という選択肢を、現実として比較できると思います。
慰謝料は「勝った金額」ではない。生活を取り戻すためのお金
不倫問題では、どうしても、
「相手から300万円取った」
「100万円しか取れなかった」
という金額が勝ち負けのように語られます。
でも30代になって思うのは、人生はそこで終わらないということです。
300万円を取って離婚して、その後15年間ずっと生活に苦しむこともあります。
100万円の慰謝料で婚姻を継続し、相手との関係を整理しながら生活基盤を維持して、その間に自分の仕事と貯蓄を作る選択もあります。
慰謝料を取らずに離婚し、新しい人生を選んだ結果、以前より幸せになる人もいます。
どれが正解とは言えません。
大切なのは、
「相手にいくら払わせれば私の勝ちなのか」ではなく、「私は10年後、どんな生活をしていたいのか」から逆算することです。
離婚するかどうかを決める前に、自分の人生の総額を見る
不倫をされたら、慰謝料について調べる。
それは必要なことです。
証拠を確認する。
財産を確認する。
養育費について調べる。
離婚した場合の生活費を計算する。
婚姻を続けた場合も計算する。
そこまでやって初めて比較できます。
慰謝料だけを比較すれば、離婚したほうが高額になることがあります。
しかし、
婚姻継続によって維持される生活費、住居、子どもの教育費などを何年分も積み上げれば、その経済的価値が一時金の慰謝料を大きく上回る家庭があります。
一方、養育費は何百万円、何千万円という予定総額になっても、それは長期間にわたり支払われて初めて実現する金額です。
そして公的調査では、
養育費を取り決めた母子世帯であっても、現在受給している割合は57.7%。約42.3%は調査時点で現在受給していません。
「取り決めをした」「公正証書を作った」「毎月払うと約束した」。それだけで、将来の生活費が完全に保証されたわけではありません。
この現実は、離婚を考えるときに知っておくべきだと思います。
もちろん、お金だけで結婚を続ける必要はありません。
でも、怒りだけで離婚を急ぐ必要もありません。
離婚する自由があるからこそ、「今日は離婚しない」という自由もあります。
不倫相手との関係を解消させること。
夫婦関係を再構築すること。
別居しながら準備すること。
慰謝料を請求すること。
最終的に離婚すること。
それらを全部、別々の選択肢として考えていいのだと思います。
傷つけられた側まで、相手の行動に振り回されて人生の重要な決断を急ぐ必要はありません。
慰謝料は大切です。
でも、もっと大切なのは、慰謝料を受け取った翌月から始まる自分の生活です。
何百万円を取れるかではなく、これから何十年の生活をどう守るのか。
30代という、まだ人生が長く続いていく年代だからこそ、私はそこまで考えてから答えを出したいと思います。
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